演出家・浅利慶太 一周忌
 
 
2019年7月13日は、演出家・浅利慶太の一周忌でした。
自由劇場には、劇団四季と浅利演出事務所の舞台に携わる俳優、スタッフ、約480名が集まりました。
舞台上には、ジャン・アヌイ作『ひばり』の舞台装置。初演出(高校時代)のサローヤン『わが心高原に』と昨年『李香蘭』の写真に挟まれ、様々な作品で演出をする浅利の写真と約3000本の花で飾られました。

 

 
午前10時。劇場に銅鑼の音が鳴り、続いて浅利演出のジャン・ジロドゥ作『オンディーヌ』のオーバーチュアが流れ、「浅利慶太一周忌の会」はスタート。
進行役は俳優の坂本里咲と味方隆司。恩師への感謝の言葉を述べ、残された私たちの「仕事」について改めて考えましょう、と皆に呼びかけました。
 

 

続いて、場内には1998年の四季劇場[春][秋]竣工式典の際に録音された浅利の挨拶が流れました。専用劇場を持つことがどれほど大変なことなのか、「夢のようだ」というその思いや感謝の意を語る浅利の言葉に一同耳を傾け、その後1分間の黙祷。
味方は「お客様の心に響く台詞を語ることが俳優の使命」と言い、そのための方法論を遺してくれた浅利に、俳優を代表して、田邊真也、坂本里咲、味方隆司、野村玲子の4名が台詞を、そして俳優全員で歌を捧げました。
台詞は、
シェイクスピア作『ハムレット』より、ハムレットとオフィーリア
ジャン・ジロドゥ作『トロイ戦争は起こらないだろう』よりユリス
同じくジャン・ジロドゥ作『オンディーヌ』よりオンディーヌ
歌は、
『コーラスライン』より「愛した日々に悔いはない」
『夢から醒めた夢』より「愛をありがとう」
 
 
最後に四季株式会社吉田智誉樹社長と、野村玲子より挨拶がありました。
 
吉田智誉樹社長
浅利慶太先生の最大の遺産、それは『劇団四季』そのものです。我々はこれを守り、未来に繋げていかねばなりません。そのためには、劇団員一人ひとりが、心の中にいる浅利先生との対話を続けていく必要がある。浅利先生は多面的なお顔を持った方だった。父親のように劇団員を支えるやさしいリーダーであり、ご自身の美学に忠実でシャープな演出家であり、大胆で繊細な経営者であり、稀代の論客、文芸人であり、常識や旧弊をしなやかに乗り越えていく改革者だった。その時々に求められる浅利先生と、一人ひとりが常に心の内で対話をしながら、皆で劇団を守って行きましょう。
 
 
野村玲子
先生は本当に稽古場が好きでした。劇場を愛していらっしゃいました。今もこの自由劇場にいらっしゃるような気がします。一階の一番後ろのところで、「ダメだなあ、さっきの台詞を言った4人は。母音は切れてないし、実感がないぞ!」と。
残念ながら、もうその言葉を聞くことはできません。
私たちはいま一度、先生から頂いた教えを皆で確認し合い、仲間を信頼し合い、後輩たちに受け継いでいかなければなりません。理念を語ることは簡単ですが、実践していくことは本当に大変な作業だと実感しています。
先生から頂いたたくさんの宝物をこれからも輝かせ続けることができるかどうかは、私たちにかかっています。
 
自由劇場は、劇団四季が創立の原点に立ち戻り、ジロドゥ、アヌイ他、ストレートプレイの醍醐味を味わって頂くために建てられた悲願の劇場です。ここに浅利から直接教えを受けた人たち、浅利の目指した演劇の下に集まった人たちが、世代を超えて一堂に会する時間を持てたことに感謝し、浅利慶太が目指した演劇、作品へのアプローチを俳優、スタッフ、経営、それぞれの立場でしっかりと受け継いでいく決意を新たにし、「一周忌の会」は終了しました。
 
浅利演出事務所は、これからも浅利の遺した作品を大切に、演劇を通して「人生の感動」をお届けいたします。
今後とも、ご支援賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。