上演にあたって

 今年4月より自由劇場では、演出家・浅利慶太の追悼公演として、5作品を上演いたします。
 浅利は1953年に10名の若者たちと劇団四季を創立。以来、亡くなる直前まで、演劇人としての人生を全うし、ストレートプレイからミュージカルまで、創作劇から翻訳劇まで、数多くの作品を手掛けました。
 追悼公演の作品を選ぶにあたり、私たちは悩みました。浅利演出の真髄を味わっていただきたい作品はいくつもあります。その中で、浅利が亡くなる前に強く上演を望んでいた『ユタと不思議な仲間たち』が真っ先に候補にあがりました。演劇を通して「人生の感動」と「生きることの素晴らしさ」を届けたいという浅利の祈りと想いがつまった作品です。追悼公演シリーズはこの作品で幕を開けることにいたしました。
 スタッフ、キャスト一同、心を込めて『ユタと不思議な仲間たち』をお届けいたします。皆様のご来場をこころよりお待ちしております。

作品について

 この作品は東北の美しい自然を舞台に、いじめに苦しむ少年ユタが、天災によって現世で生きることが叶わなかった座敷わらしたちと出会い、彼らとの交流を通して、生命の尊さ、友情の大切さを学び、たくましく成長していく物語です。岩手・南部出身の作家、故・三浦哲郎さんの同名小説が出発点となっています。
 初演は1977年。時代や劇場に合わせ、様々な工夫を加えながら公演を重ねてきました。浅利が手掛けたオリジナルミュージカルの中でも長い歴史を持った作品です。

ものがたり

 東北のとある山村 “湯の花村”。父親を亡くした水島勇太は、東京から、母親の実家があるこの小さな村に引っ越してきた。しかし、村の子どもたちに馴染めず、いじめられてばかりいた。しかも皆、勇太を “ユウタ” ではなく、“ユタ” としか呼んでくれない。そんな彼の味方は、幼い弟の子守をしながら学校に通う同級生の小夜子と、寅吉じいさんだけ。勇太はいじめを受け続けるつらさと悲しみ、そして孤独に悩み、遂には自殺まで考えるようになる。
 

 
 ユタを気遣う寅吉は、地元に代々伝わる “座敷わらし” の話を教え、友達になってみろと勧める。そして、ある満月の夜、寅吉の言葉に従って、大黒柱のある旧家 “銀林荘” の一室に泊まったユタは、五人の座敷わらしたちに出会う。皆、飢餓や間引きによって、この世で生きることが叶わなかった悲しい運命を背負っていた。

弱音ばかり漏らすユタを、彼らは叱咤しつつも、生きることの素晴らしさを説く。
 
 “仲間たち”との友情とさまざまな試練を通じて、たくましく成長していくユタ。だがやがて、彼らと別れの時がやってくる……。

 
愛すべきキャラクター “座敷わらし”

 “座敷わらし”とは、古くから東北地方に伝わる子供の精霊のこと。度重なる飢饉により「間引き」されたり、捨てたりされた子どもの霊が、生きることの叶わなかった悲しみと悔しさを背負い、現世を彷徨っているといわれています。劇中では5人の魅力的な座敷わらしたちが登場。ユタを厳しく、また温かく見守ります。


 
元禄八年の大飢饉の時、ぺんどろ沼で生まれたがすぐに死んでしまったためペドロと呼ばれている。座敷わらしたちの親分格で、ユタのために一肌脱ぐ頼もしい存在。小夜子に恋心を抱いている。
 
 

 
天明三年の大飢饉の時、壇沢(だんざわがなまってダンジャ)という所で生まれたが、すぐに間引きされてペドロ一家の仲間入りとなった。哲学肌でいつも冷静なしっかり者の座敷わらし。
 
 

 
座敷わらしたちの中で唯一、生まれた時につけられた「権三」という名前を持っている。天保四年の大凶作の時、ろくな食べ物も食べられず飢え死にしたため、いつもお腹を空かせている。気が短く、少し乱暴者。
 
 
 
 

 
宝暦五年の大凶作で夜逃げした両親に、大きな家の門前に置き去りにされた。生きてほしいという両親の願いも虚しく、泣き入って気を失ったところをペドロに拾われた。仲間の中で一番小さく泣き虫の座敷わらし。
 
 

日之出楼という遊郭の遊女だった母親が、客と駆け落ちしてしまい、生まれたばかりのヒノデロはお乳ももらえず死んでしまった。白粉が大好きで言葉使いも女性的な優男の座敷わらし。
美しい響きをもった方言

 「南部弁の美しさを伝えたい」と浅利は稽古場で繰り返し語っていました。恩師の加藤道夫先生から、「もしも、東北弁が標準語だったら、日本の詩劇とオペラの完成はもう一世紀早くなっていたかもしれない。」と教えられたそうです。
 東北の農村を舞台とする本作品では、台詞に南部地方・岩手県二戸近辺で用いられる方言を採用しています。リズミカルで抑揚に富み、美しく柔らかい響きをもったこの言葉は、それ自体が音楽のようです。日本語がもつ美しさを改めて感じさせてくれるミュージカルです。

故・三木たかしさんの名曲の数々

 音楽を手掛けたのは「津軽海峡・冬景色」、「時の流れに身をまかせ」など多くのヒット曲を生んだ三木たかしさん。ミュージカルでも『夢から醒めた夢』や『ミュージカル李香蘭』など、数々の作品で作曲を担当し、心に残る名曲を残しています。この作品では、演歌や民謡の要素を盛り込み、日本的で親しみやすい音楽世界を創りあげています。劇中歌「友達はいいもんだ」はNHK「みんなのうた」に取り上げられ、また終幕に小夜子が歌う「夢をつづけて」は森進一さんがカバー。いずれも大きな話題となりました。特に、友情と連帯の大切さを謳った「友達はいいもんだ」は、小学校の歌集にも掲載されるなど、広く歌い継がれています。

浅利慶太語録
ぼくは、どんな生き方だっていい、“生きている”のはいいことだと、お客様が劇場(はこ)の中で感じてお帰りになればいいな、といつも考えている。生きていることの感動、楽しさ、輝き、喜び、そのためにやっている。
1984年同作品プログラム
井上ひさし氏との対談より抜粋
 
 
完成度の高いミュージカルの創造を目指したい。生命の賛歌をテーマにした『ユタと不思議な仲間たち』は、それに値する魅力を持っている。
1989年同作品プログラムより抜粋
 
 
ぼくは東北弁ということばが好きでね。きれいなことばだよ。あんな半母音の多い、ものやわらかなことばってないんだな。 ―《中 略》―   五十くらいの響きがあると思うんだ。五十の優美な音が響き合う大言語圏であるというのがぼくの発想なんだけど。
1976年『武満徹対談集・上』芸術現代社より抜粋
 
 
「東北弁は美しい。もしこの言葉が標準語だったら、日本のオペラと詩劇の完成は一世紀早まっただろう」十六歳の時に聞いたこの師の一言から東北の言葉に関心を持つようになった。 ―《中 略》― 標準語は機能言語である。早急に西洋からの文物を移入し、近代国家をつくり上げるためにこうした型を選んだのは仕方なかったのかもしれない。しかし私たちは今あらためて東北弁に限らず「方言」と呼ばれる優しく美しい言葉を大切にしたい。日本人はみんな二つの言葉をしゃべるようになりたい。故郷の言葉と標準語。それが実はこの機能言語を数世紀かけていつか美しい日本語に仕上げる、唯一の方法でもあるのだ。
日本経済新聞1999年6月1日
「あすへの話題―うるわしき東北弁―」より抜粋
 
 
ここ数年、方言に凝っております。芝居はなんといっても〈言葉〉で、しかも生きた言葉、話す言葉の芸術と心得ております。 ―《中 略》― 生きた言葉とはもっと深い味わい、色どり、響きのあるものではないか。その郷の自然、風土、人々の生活の歴史が感じられるものであるべきではないだろうか。
1976年1月 歳旦口上より抜粋
 
 
輝くような緑と木漏れ日の夏。破れた革靴から染みてくる雪水の冷たさに冬中耐えた日々。学校までの三・七キロの道の想い出は鮮明だ。激しいイジメにもあった。ミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』で下校中の主人公がイジメにあう。振り付けの加藤敬二君に私の体験を話した。出来上がったダンスナンバーを見て、鳥肌が立った。よく生きていられた。
朝日新聞1995年9月14日
「疎開で住んだ軽井沢―私の故郷」より抜粋
スタッフ

企画・オリジナル演出 浅利慶太 
原作 三浦哲郎新潮社刊「ユタとふしぎな仲間たち」より

2019年再演版演出 野村玲子
       作曲 三木たかし
       振付 加藤敬二
       装置 土屋茂昭
       照明 沢田祐二
       台本 梶賀千鶴子
       作詞 岩谷時子・梶賀千鶴子

キャスト
ペドロ
ダンジャ
ゴンゾ
モンゼ
ヒノデロ
ユタ
小夜子
寅吉
ユタの母/クルミ先生
大作
一郎
新太
たま子
ハラ子
桃子
 
スウィング
 
下村 青
坂本 里咲
東 泰久
小野田 真子
近藤 真行
山科 諒馬
若奈 まりえ
菊池 正
服部 幸子
山口 優太
田邊 祐真
横井 漱
林 香純
吉田 藍
佐田 遥香

小坂 華加
森 健心
ペドロ
ダンジャ
ゴンゾ
モンゼ
ヒノデロ
ユタ
小夜子
寅吉
ユタの母/クルミ先生
大作
一郎
新太
たま子
ハラ子
桃子
 
スウィング
 
下村 青
坂本 里咲
東 泰久
小野田 真子
近藤 真行
山科 諒馬
若奈 まりえ
菊池 正
服部 幸子
山口 優太
田邊 祐真
横井 漱
林 香純
吉田 藍
佐田 遥香

小坂 華加
森 健心

※出演者は都合により、変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。

公演日程

チケット情報

 チケット発売日

  「四季の会」会員 
 2月16日(土)午前10時開始
 
 一般発売
 2月23日(土)午前10時開始
 

 チケット料金

 8,500円(税込)
 「四季の会」会員、一般共通、全席指定
 
 

 前売り券について

 

 
 劇団四季

 SHIKI ON-LINE TICKET
 http://489444.com/
 劇団四季予約センター
 0120-489444(10:00~18:00)
 
 直接購入
 劇団四季の各専用劇場 (自由劇場、キャッツ・シアターを除く)
 *但し「四季の会」会員先行予約初日の各専用劇場でのご購入は、12:00からの受付となります。
 

 
 チケットぴあ

 http://t.pia.jp/(PC・携帯)
 0570-02-9999 [Pコード:597-254]
 チケットぴあ各店舗
 セブン-イレブン店頭
 
 

当日券のお知らせ

 
4月19日(金)~5月6日(月・祝)までの全ての公演におきまして、当日券のチケットをご用意しております。尚、当日券は前日よりご予約頂けます。詳しい購入方法については以下の通りです。ご確認くださいませ。
 
■ インターネット予約
 SHIKI ON-LINE TICKET    http://489444.com/
 ● 公演前日の19:00から公演当日の開演2時間前まで予約受付
 
■ 電話予約
 劇団四季予約センター  0120-489444
 ● 公演前日の15:00(「四季の会」会員は14:00)〜18:00まで予約受付
 ● 公演当日の10:00から開演2時間前まで予約受付
 劇団四季自動予約  0120-489555 ※「四季の会」会員のみ
 ● 公演前日の14:00〜23:59まで予約受付
 
■ 直接購入
 ● 公演当日、開演90分前より自由劇場チケットボックスにて販売
  ※ 前日予約で完売した場合には販売はございません。
 

上演時間 

 約2時間20分(20分間の休憩を含む)を予定しています。
 

ご注意 

 ● 日程および開演時間は急きょ変更となる場合がございます。予めご了承ください。
 ● 公演当日3歳以上のお子さまが観劇される際は、お席をお求めください。2歳以下のお子さまを膝の上に抱いてご覧になる場合でも、お抱きになる方の肩より頭が出ないお子さままでとし、後席へのご配慮をお願いいたします。
 

託児サービス(有料・要予約・定員制)

 お申し込み:アルファコーポレーション
 <TEL>       0120-086-720
      (10:00~17:00/土日祝休)
 <WEB>      http://www.alpha-co.com/ks_index.jsp
 

劇場アクセス

お問い合わせ

 公演に関するお問い合わせ
 浅利演出事務所
 電話 : 03-3379-3509
 e-mail : information@asarioffice.jp